2.スカイホエール
センターに収蔵されているスカイホエールのミニチュアは、当時撮影で使用された物で、全長170cm、全幅120cm(約1/35スケール)であり、複数制作されたモデルの中では最大のサイズとなっています。
まず目を引くのはその形状と配色です。細身の胴体と平たく伸びた両翼、そして後方に大きく突き出した尾翼によって構成された機体は、弧を描くようななめらかな曲線で縁どられつつも、随所に見られる鋭くとがった装飾がアクセントとして光る、奇抜で斬新なデザインに仕上がっています。また、鮮やかな青をベースにしつつ赤のラインが映えるカラーも、従来のシルバーを基調とするメカから一転して非常に大胆な彩色となっています。
デザインを担当した鈴木儀雄氏は、スカイホエールをはじめとするZATメカは子どもにも魅力がわかりやすく伝わるよう、装飾が多くかつカラフルな見た目を目指したと語っています。
またスカイホエールの特色は、ZATの繰り出す奇想天外な作戦を支える臨機応変な対応力にあります。例えば、機内には化学分析室が備わっており、その部屋で隊員が薬品などを作り出すことができるようになっています。加えて機体下部には収納スペースがあり、武器などの様々なパーツを取りつけることが可能です。失敗も多かったものの、ZATはこれらの機能を柔軟に駆使してタロウの怪獣退治を援護しました。
なお、これらの特徴は商業的な側面とも関わりがあったと考えられます。当時の特撮番組では、玩具展開の主力が怪獣からメカニック関連へと移りつつありました。それに伴い『タロウ』も、企画の段階から防衛チームや各種メカの存在を強調したり、オープニング映像もこれまでとは趣向を変えてメカの出撃シーンを採用したりするなど、メカニック描写に注力して制作が進められたのです。そうした事情を踏まえると、スカイホエールの派手なデザインや活躍の機会の多さなども、視聴者に対するメカのアピールの一環であったと推測できます。
しかし、個性的なメカ達が決して主張しすぎることなく作品に馴染むことができていたのは、やはり『タロウ』の空想力豊かな世界観がもつ懐の深さがあったからではないでしょうか。